【第三章】薬機法の適用範囲外のゾーン「明らか食品」について
第一章では、サプリメントと医薬品では、できる表現が異なり、 サプリメントが医薬品と誤解されるような売り方をするのは薬機法違反だと学びました。しかし、誰が見ても明らかに「食品」だと認識されれば(以下、明らか食品)医薬品と誤解する人はいないため、薬機法の適用範囲外となります。よって、効能を述べても薬機法違反とはなりません。
1.「明らか食品」とは?
明らか食品というのは、明らかに食品と認識される物を指します。具体的に何が明らか食品なのか?行政の解釈を見てみましょう。
- 01通知
46通知※を継承した2001年の通知では、下記のように規定しています。
「ただし、次の物は判定方法による判定によることなく、当然に、医薬品に該当しない。」
(1) 野菜、果物、菓子、調理品等その外観、形状等から明らかに食品と認識される物
(2) 栄養改善法(昭和27年法律第248号)第12条の規定に基づき許可を受けた表示内容を表示する特別用途食品
※46通知とは:厚生省が昭和46年に通知した「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日厚生省薬務局長通知:通称「46通知」)を指します。サプリメントなどの健康食品は、「医薬品の世界に入り込む(=医薬品だと誤解を招く)」と無承認無許可医薬品と捉えられ、薬機法違反になります。この通知によって、「医薬品の範囲に関する基準」が定められました。
- 「医薬品の範囲基準ガイドブック」 p.18(じほう刊)より抜粋
(1) 通常の食生活において、その物の食品としての本質を経験的に十分認識していて、その 外観、形状等により容易に食品であることがわかるものは、その物の食品としての本質に誤認を与えることはないため、通常人がその物を医薬品と誤認するおそれはない。
(2) その物がここでいう『明らかに食品と認識される物』に該当するか否かは、 食生活の実態を十分勘案し、外観、形状及び成分本質からみて社会通念上容易に食品と認識されるか否かにより判断するものである。
通常人が社会通念上容易に通常の食生活における食品と認識するものとは、例えば次のような物が考えられる。
【明らか食品の具体例】
分類 | 具体例 | イメージ |
1.野菜、果物、卵、食肉、海藻、魚介等の生鮮食料品及びその乾燥品(乾燥品のうち医薬品として使用される物を除く) | トマト、キャベツ、リンゴ、牛肉、豚肉、 | ![]() |
2.加工食品 | 豆腐、納豆、味噌、ヨーグルト、牛乳、チーズ、バター、パン、うどん、そば、緑茶、紅茶、ジャスミン茶、インスタントコーヒー、ハム、かまぼこ、コンニャク、清酒、ビール、まんじゅう、ケーキ、等 | ![]() |
1.2の調理品 | 惣菜、漬物、缶詰、冷凍食品 等 | ![]() |
4.調味料 | 醤油、ソース | ![]() |

ただし、最近は加工食品の種類が増えるなどして判断基準が難しくなっています。 行政から明らか食品と認められないものについても見ていきましょう。
①有効成分が添加されている場合
→「食品」に食以外の効果を目的とした成分が入っている場合を指します。たとえば、ガムでもふつうのガムには入っていない「痩せるような成分」が入っている場合は、「明らか食品」とは言えません。
②一般性がない(なじみが薄い)場合
→ 海外では十分に浸透している食品であっても日本ではなじみが薄いものを指します。たとえば、「マヌカハニー」は、原産国のニュージーランドでは食生活に文化として根付いていますが、日本では誰もが食品と認識できるわけではないため、一般的とは言えません。よって「明らか食品」とはいえません。
(日本社会に浸透していけば、今後、”明らか食品”として認められる可能性もあります)
③主目的が食にない場合
→「食品」に食以外の目的がある場合を指します。たとえば、「消臭ラムネ」など、主な目的がおやつ菓子ではなく消臭にある場合は、「明らか食品」とは言えません。
※平成19年4月の通知により「お菓子」は明らか食品からはずされています。

野菜や果物など素材がはっきりしているものは迷わず明らか食品ですが、加工されている場合は判断が難しいケースもあります。商品の事例を出しながら「明らか食品」に当たるか見てみましょう。
(Q)
ユズを主原料とした500ml瓶入り濃縮ジュースは、下記表示をしても外観・形状、成分本質から総合的に判断して、「明らかに食品と認識される物」に該当する?
「南国の明るい太陽を浴びてすくすくと育った柚子。その自然の風味と香りをそのまま搾りたての新鮮なドリンクに致しました。<ゆず>は、消化を助け、二日酔いや、妊婦のつわり、口内炎などにきき、又気分のすぐれない時に効果を発揮します。冷水を注いで4~5倍とし、氷を浮かべてお召し上がり下さい。」
(A)
ユズは通常の食生活で食品として認識されています。医薬品として使用されている成分や食品として使用されていないような成分が含まれていなければ、外観・形状、成分本質からみてジュースと認識できることから、「 明らかに食品と認識される物」に該当します。
食品としての標示の適否については、栄養・食品担当部局等の担当部局に照会しましょう。
2.明らか食品PRの成功事例
明らか食品を戦略的に用いた事例や、PRを紹介していきます。 医薬品的な成分が入っていない「明らか食品」であっても、商品に含まれる栄養素の効能を伝えつつ、効果的なPRをしているので表現する際の参考にしてください。
①緑黄色野菜ジュース~広告
ジュースの缶にはこのような記載をして、緑黄色野菜とβ-カロチンとガン予防のつながりをわずかに示唆するのにとどめています。
NCI(米国国立ガン研究所)は、毎日6mgのβ-カロチンが、緑黄色野菜から摂取できるような献立を推奨しています。
(NCIガイドブック「食事・栄養・ガンを防ぐ食品の選択」より)
一方、新聞広告や冊子では、がん予防をうたうことで、商品の効能を伝えています。

②そば粉 販促チラシ

ルチンは今話題のポリフェノール、フラボノイドの1種です。
・毛細血管を強くする働き ・破れやすくなった血管を丈夫にする働き ・血圧を維持する働き ・ビタミンCの吸収を助け、酸化から守る働き (××辞典より)
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権威性のある辞典から栄養素の効能を抜粋して商品の魅力を訴求することで、商品の魅力を伝えています。

③食酢 DM
カラダに効果 アミノ酸パワー
私達の体にはなくてはならないアミノ酸。実は私達の体の約20%がアミノ酸でできているのです。このアミノ酸にはどんな効果があるのでしょう? |
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1.血液サラサラ効果: | ドロドロ血液を改善し、血液の流れをスムーズに保つ働きがあります。 |
2.美肌効果: | アミノ酸の中にはメラニンの過剰生成を抑え、シミを防ぐものもあります。また肌にハリを与えます。 |
3.ダイエット効果: | 体脂肪の燃焼を促す作用があります。また、基礎代謝を高め太りにくい体を作る働きもあります。 |
4.体力向上: | たまってしまった乳酸(疲労物質)を減らし、新たな発生を抑える力があります。 |
5.免疫力強化: | 病原菌などを体外に追い出し、免疫力を高める働きがあります。 |
アミノ酸の効果や働きを書くことで、販促したい「明らか食品」にはアミノ酸が入っているからオススメだということを暗示しています。

④ハーブ POP原稿
バジル | 集中力を高めるハーブ スパイシーでほのかに甘い香りが気分をリフレッシュして集中力を高めると言われています。 |
セージ | 健康に救いのハーブ 古代ローマでは「救い主のセージ」として薬草として栽培されたハーブで、消化を助け、肝臓にも良いとされています。 |
イタリアン パセリ |
美肌と料理のハーブ 鉄分、カルシウム、β‐カロチンやビタミンCなど女性に嬉しい栄養素が豊富に含まれるハーブです。 |
ローズマリー | 若返りのハーブ 強い抗酸化力を持つことからヨーロッパでは、「若返りのハーブ」として知られています。 |
ハーブの種類ごとに、期待できる効果を記載しています。 飲用した先にあるプラスの未来や「○○に良いとされている」という婉曲的な表現、「○○として知られている」という客観的な表現をすることで、効能を訴求しています。(該当表現の箇所には青地で印をつけています)

3.明らか食品をRPする際の注意点
明らか食品であれば効能をうたっても薬機法には違反しませんが、効能によっては 健康増進法26条に違反する場合があるのでアフィリエイターも注意しましょう。どんな場合に気をつけたほうが良いのか、説明していきます。
健康増進法26条の中に「病者用食品」というものがあります。病者用食品には表示に規制があり、違反すると罰則があります(37条)。
健康増進法26条(特別用途表示の許可)
1項 販売に供する食品につき、乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用等の特別の用途に適する旨の表示(以下「特別用途表示」という。)をしようとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
健康増進法37条(罰則)
2項 第26条1項(特別用途表示の許可)の規定に違反した者は、50万円以下の罰金に処する。

明らか食品をPRする際のNG表現とOK表現について比較していきましょう!
【NG表現】
- カロリー制限が必要な人に適する
- エネルギー制限が必要な人に適する
- 塩分を制限している人に
- 減塩○○
- 低カロリー○○
等
【OK表現】
- 「免疫力UP」のような病名とは言えない表現
- 病名に絡めるのであれば「血圧が気になる方に」と曖昧な表現にする
たとえ、「 明らか食品」でも病名は訴求できないので気をつけましょう。NG表現では、具体的な病気の症状を指摘しているため健康増進法26条に違反になるので、婉曲的な表現や「○○の症状が気になる人に」という表現に変えるのが無難です。
明らか食品と景表法の関係について
明らか食品であれば薬機法違反にはなりませんが、効果表現がオーバートークだと景表法(=景品表示法)違反となってしまうので、表現に注意しましょう。アフィリエイターが気をつけるポイントは、直接的な表現で言い切らないことです。
※景品表示法については、第四章の広告表現でも触れます
NG表現とOK表現を比べてみましょう。
【NG表現】
「これで血糖値が下がる」
「これで快眠できる」
→よっぽどの根拠がなければオーバートーク
【OK表現】
「 これで血糖値が下がったという体験談を20通近くいただいています」
「 △△研究所が快眠効果があるという研究成果を発表しています」
→中身が真実であればOKです。

第三章のまとめ
それでは、第三章で学んだことをまとめます。
- 誰が見ても明らかに「食品」(=明らか食品)と認識されれば薬機法の適用範囲外となり効能を述べることができる
- 「明らか食品」は野菜、果物、菓子、調理品など外観、形状等から明らかに食品と認識される物を指す
- 明らか食品は効能をうたっても薬機法には違反しないが、 効果表現がオーバートークだと景表法26条(=景品表示法)違反となる可能性があるので注意が必要
- 明らか食品がオーバートークを避けるポイントは、言い切らないこと
- 明らか食品であっても病名を直接的に訴求できない
- 病名に絡めるのであれば 「○○が気になる人に」と婉曲的な表現にとどめるのが無難